介護BCPの資料・様式はどこにある?1から作らない「3層」の集め方
「BCPの研修をやることになったが、資料をゼロから作る時間がない」——これは、担当者になった方がまず直面する壁です。
結論から言えば、1から作る必要はありません。公的機関がひな形や様式を公開しており、それを土台に自施設のぶんだけ手を入れれば十分です。ただし「集めて、そのまま使う」だけでは、いざという時に動けない計画になります。
この記事では、介護BCPの資料・様式を「厚労省」「自治体」「現場」の3層で組み立てる方法と、そのまま使うときに気をつけたい点を、元自衛官・気象予報士の視点で解説します。
1. 【結論】1から作らない。3層で組む
まず結論からお伝えします。BCP関連の資料は、次の3層で考えると迷いません。
- 厚労省のガイドライン:制度の土台。BCPひな形・研修動画・チェックリスト。
- 自治体の参考様式:提出先の運用に合わせる。訓練記録様式・避難確保計画の様式など。
- 現場フォーマット:自施設で作る。安否確認シート・アクションカードなど。
上の層ほど「全国共通で使える代わりに、内容が一般的」、下の層ほど「自施設専用だが、自分で作る必要がある」という関係です。上から順に集め、足りない部分だけを下の層で補う——これが最短ルートです。
▲ 上から順に集め、足りない分だけ自分で作る
2. 第1層:厚労省のガイドライン
まず確認したいのが、厚生労働省が公開している「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」です。ここに、BCP関連の基本的な資料がまとまっています。
| 資料 | 使いどころ |
|---|---|
| BCPのひな形(様式) | 自然災害編・感染症編それぞれ。計画書の骨格をここから作る |
| ガイドライン本体 | 何を書くべきか、どう運用するかの考え方。研修の教材にもなる |
| 研修用の動画・資料 | 職員向け研修でそのまま視聴・配布できる |
| チェックリスト | 自施設の計画に抜けがないかの点検に使う |
探し方は、厚生労働省のサイトで「介護 業務継続ガイドライン」と検索するのが確実です。ページ内から様式一式をダウンロードできます。
3. 第2層:自治体の参考様式
次に確認したいのが、所管の自治体(都道府県・市町村)が公開している様式です。ここは見落とされがちですが、実務上とても重要です。
| 様式 | 入手先 |
|---|---|
| 研修・訓練の記録様式 | 都道府県・市町村の介護保険担当課。運営指導の資料として示されている場合がある |
| 避難確保計画の様式 | 市町村の防災担当部署。対象施設には配布されていることが多い |
| 自主点検表 | 運営指導の事前提出書類として、指定権者が様式を定めていることがある |
提出や確認の相手が自治体である書類は、その自治体の様式に合わせるのが確実です。運営指導を行うのは指定権者である都道府県・市町村なので、様式が示されていればそれに従うのが最もスムーズです。
4. 第3層:現場フォーマット
1層・2層で揃わないのが、災害のときに現場で実際に使う紙です。ここは自施設で作るしかありません。ただし、作るべきものは多くありません。
| フォーマット | 中身 |
|---|---|
| 安否確認シート | 利用者・職員の氏名を並べ、横に「確認済/未確認」を書き込める形にする |
| 電源トリアージ表 | 停電時にどの機器へ優先的に電源を回すかの順番 |
| アクションカード | 「何が起きたら、誰が、何をするか」を1枚にまとめたもの |
| 持ち出し品リスト | 避難時に何を持ち出すか。置き場所も併記する |
いずれもA4で1枚に収めるのが鉄則です。災害時に何ページもめくる余裕はありません。
5. 「そのまま使う」ときの落とし穴
ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。資料は集まっても、そのままでは自施設の計画になりません。
ひな形は、全国どの施設でも使えるように一般的な内容で作られています。裏を返せば、次のような自施設の固有事情が反映されていません。
| ひな形に入っていないもの | 自施設で埋めること |
|---|---|
| 災害リスク | 浸水想定区域か、土砂災害警戒区域か。想定される浸水深は何メートルか |
| 建物の条件 | 何階建てか、垂直避難できるか、エレベーターの有無 |
| 職員体制 | 夜勤は何人か、近隣に住む職員は何人か |
| 利用者の状態 | 医療的ケアが必要な方は何人か、自力歩行できる方は何人か |
この4つが埋まっていない計画は、書類としては完成していても、災害時にそのまま読んでも動けません。
資料をそのまま使うと、自施設の災害リスクとズレたまま運用することになります。まず国土交通省の「重ねるハザードマップ」で自施設の浸水想定・土砂災害警戒区域を確認し、それに合わせて想定シナリオを差し替えてください。
浸水想定が3メートルなら1階は使えませんし、土砂災害警戒区域なら山側の部屋は避けることになります。ひな形は出発点、リスク分析はカスタマイズの根拠です。この順番を守ると、計画が一気に自施設のものになります。
6. 集めたあと、最初にやること
資料が揃ったら、次にやることは「読み込む」ではなく「一度やってみる」ことです。
おすすめの手順は次の通りです。
① まず埋める:ひな形の空欄を、分かる範囲で埋める。分からないところは空欄のままで構いません。
② 短い訓練で試す:15分の机上訓練で十分です。「夜間に地震が起きた」という想定で、その計画を見ながら判断してみます。
③ 詰まったところを直す:「この連絡先が古い」「この様式は現場で書きにくい」——出てきた課題が、そのまま修正リストになります。
この順番だと、直すべき箇所が自動的に浮かび上がってきます。完璧に作ってから訓練するのではなく、粗くても作って試す方が、結果的に早く完成します。
使える資料を集めるのは正解です。ただし「集めて満足」で終わらせないこと。必ず一度は現場で通しでやってみてください。
書類の上では完璧に見えても、実際にやると「この様式は暗い中では書きにくい」「この欄は誰が書くのか決まっていない」といった問題が必ず出ます。訓練で洗い出して、自施設に合う形に手を入れる——これが、集めた資料を自分たちのものにする唯一の方法です。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. 介護BCPのひな形や様式は、どこで手に入りますか?
結論から言うと、まず厚生労働省の「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」を確認してください。BCPのひな形や研修用の動画・資料が公開されており、これが土台になります。次に、都道府県や市町村が独自に訓練記録様式や点検表などの参考様式を公開している場合があるため、所管の自治体のサイトを確認してください。避難確保計画の様式は、市町村の防災担当部署が配布しています。これらを組み合わせれば、1から作る必要はありません。
Q2. 厚労省のひな形をそのまま使ってもよいですか?
結論から言うと、出発点として使うのは有効ですが、そのまま完成としてしまうのは避けてください。ひな形は全国どの施設でも使えるよう一般的な内容で作られているため、自施設の災害リスク(浸水想定区域か、土砂災害警戒区域か)、建物の構造、職員体制、利用者の状態が反映されていません。埋めるべき空欄を自施設の実態で埋め、訓練で検証して初めて使える計画になります。
Q3. 自治体の参考様式と厚労省の様式、どちらを使えばよいですか?
結論から言うと、提出や確認の相手が自治体である書類は、その自治体が様式を示している場合はそちらに合わせるのが確実です。運営指導は指定権者である都道府県・市町村が行うため、様式が指定されていればそれに従います。指定がなければ厚労省のひな形や自施設で作ったフォーマットで問題ありません。迷う場合は所管の自治体に確認してください。
8. おわりに:集めるのは手段、動けるのが目的
BCPの資料集めは、1から作らないための工夫です。厚労省のひな形があり、自治体の様式があり、足りない分だけを自分で作る——この3層で考えれば、担当者の負担は大きく減ります。
ただし、集めることが目的になってしまうと、分厚いファイルだけが残ります。集めた資料は、自施設のリスクで書き換えて、訓練で試して、はじめて使えるものになります。
「どの資料を使えばいいか分からない」「集めたけれど、自施設向けにどう直せばいいか相談したい」——そのようなお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。気象予報士としての「正確な災害リスク分析」と、元自衛官としての「本当に動ける危機管理ノウハウ」で、御社の計画づくりを支援します。拠点の鹿児島からオンラインで全国対応しています。
主な出典・参考
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」(BCPひな形・研修動画・チェックリスト)
- 各都道府県・市町村が公開する研修記録様式・自主点検表などの参考様式
- 国土交通省「要配慮者利用施設における避難確保計画の作成・活用の手引き」(避難確保計画の様式)
- 国土交通省「重ねるハザードマップ」(浸水想定区域・土砂災害警戒区域の確認)
※ 様式の指定の有無や提出方法は、指定権者(都道府県・市町村)により異なります。最新の情報は所管の自治体・公式サイトをご確認ください。
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