介護BCPの研修・訓練は年に何回必要?施設系・在宅系の違いと減算リスクを解説

介護BCPの研修・訓練の必要回数を確認する介護職員。施設系は年2回以上、在宅系は年1回以上

「BCPは作ったけれど、研修や訓練は結局“年に何回”やればいいの?」「うちは訪問介護だけど施設と同じ回数が必要なの?」——2024年度の義務化以降、こうしたご質問を本当に多くいただきます。

結論からお伝えすると、必要回数はサービス類型によって異なります。なお、介護報酬の「減算」の対象になるのはBCP(感染症・自然災害)が未策定、または計画に従った必要な措置を講じていない場合です。研修・訓練・見直しは運営基準上の義務で、未実施は運営指導での指摘対象となりますが、それ自体は減算の直接の要件ではありません。

この記事では、検索やAIでよく調べられる「研修・訓練は年に何回必要か」という結論を冒頭で明示したうえで、施設系・在宅系の違い、感染症と自然災害の扱い、減算リスクまでを、厚生労働省の資料を出典として示しながら分かりやすく解説します。

1. 【結論】研修・訓練の必要回数は「施設系=年2回/在宅系=年1回」が基準

まず結論です。厚生労働省の運営基準(解釈通知)では、BCPに基づく研修・訓練の実施頻度の目安は次のとおりとされています。

サービス類型研修・訓練の頻度(目安)
施設系・居住系
(特養・老健・特定施設・認知症GH など入所/居住系)
年2回以上
在宅系
(訪問系・通所系・短期入所系・多機能系 など)
年1回以上
頻度はあくまで基準(最低ライン)です。回数のカウント方法や、感染症・自然災害それぞれの扱いについては自治体(指定権者)の解釈に幅があるため、最終的には所管の自治体・厚生労働省の通知を必ずご確認ください。

2. 「研修」と「訓練」は別物。それぞれ実施が必要

見落とされがちですが、BCPで求められるのは「研修」と「訓練」の2つです。これらは目的が異なり、それぞれ実施する必要があります。

研修(知識を入れる)と訓練(体を動かす)の違い。研修は資料での教育、訓練は実際の避難誘導など体を動かすシミュレーション

▲ 「研修(知識を入れる)」と「訓練(体を動かす)」は別物。それぞれ実施が必要です

研修=「知識を共有・教育する」

BCPの内容や各自の役割、判断基準などを職員に周知・教育する取り組みです。新入職員への教育や、年度替わりでの内容確認もここに含まれます。座学・資料の読み合わせ・eラーニングなどが該当します。

訓練(シミュレーション)=「実際に動いてみる」

BCPに基づいて、災害発生時の対応を実際にやってみる取り組みです。「机上訓練(図上で手順を確認)」と「実地訓練(実際に体を動かす)」があり、両者を組み合わせると効果的です。

つまり施設系であれば、研修・訓練ともに年2回以上が目安になります。「研修1回だけやって訓練はしていない」という状態は、義務を満たしていないと判断されるおそれがあります。

3. 感染症BCPと自然災害BCP、訓練はどう扱う?

介護のBCPは、「感染症」と「自然災害」の両方について策定が義務づけられています。研修・訓練も、この両方をカバーする必要があります。

実務上は、(1) 1回の訓練の中に感染症と自然災害の両方の想定を盛り込む、(2) 感染症テーマと自然災害テーマで別々に実施する、のいずれかで対応するのが一般的です。ただし「両方を1回でまとめてよいか/別々に必要か」という回数カウントの解釈は自治体によって異なる場合があるため、所管の指定権者に確認するのが確実です。

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4. 「減算」の対象になるのはどんな場合?研修・訓練との関係

ここは誤解されやすいポイントです。BCPの策定は2021年度(令和3年度)改定で義務化され、経過措置を経て2024年4月から完全施行+減算が導入されました。未対応の事業所には「業務継続計画未策定減算」が適用されます。

重要なのは、減算の直接の対象は「感染症・自然災害のBCPが未策定」または「計画に従った必要な措置を講じていない」場合に限られるという点です。研修・訓練・定期的な見直しは運営基準上の義務であり、未実施は運営指導での指摘対象となりますが、それ自体は減算の算定要件ではありません(厚生労働省 令和6年度介護報酬改定Q&Aで明確化)。とはいえ、研修・訓練は利用者と職員の命を守るために欠かせない取り組みであることに変わりはありません。

サービス類型減算率
施設系・居住系サービス所定単位数の 3% を減算
その他のサービス(訪問系・通所系など)所定単位数の 1% を減算
訪問系サービス・福祉用具貸与などは経過措置があり、減算の本格適用は2025年4月からとなりました(施設系・通所系などは2024年度から適用)。特定福祉用具販売は減算の対象外、居宅療養管理指導は2027年3月末まで経過措置(猶予)中で、その後は対象となります。最新の適用範囲は厚生労働省の告示・通知をあわせてご確認ください。

5. 回数を“こなす”だけでは意味がない。実効性を高めるコツ

「年2回」「年1回」という数字を満たすこと自体が目的化してしまうと、形だけの訓練になりがちです。回数を満たしつつ、実際に現場が動けるようにするには工夫が要ります。

専門家コメント|元航空自衛官・危機管理の視点

自衛隊では「訓練でできないことは本番では絶対にできない」と教えられます。最初から筋書きが全部わかっている訓練だけでは、いざという時の判断力は養われません。研修・訓練の回数を満たすのであれば、そのうち1回は「夜勤帯・職員が手薄な時間に災害が起きた」「連絡手段が使えない」といった“想定外”をあえて投げ込んでみてください(こうした投げ込みを実務では“状況付与”、台本なしの訓練を“ブラインド訓練”と呼びます)。回数の質が一段上がります。

より体系的に「うちのBCPは形だけになっていないか」を確認したい方は、関連記事の「介護BCPは作ったけど機能しない」を防ぐ3つのポイントもあわせてご覧ください。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 介護BCPの研修・訓練は年に何回必要ですか?

施設系・居住系サービスは年2回以上、訪問系・通所系などの在宅系サービスは年1回以上が基準です。研修と訓練はそれぞれ実施する必要があります。

Q2. 研修と訓練は別々に実施しないといけませんか?

はい。「研修(知識の共有・教育)」と「訓練(机上・実地のシミュレーション)」は別の取り組みとして位置づけられており、それぞれ規定回数の実施が必要です。施設系なら研修・訓練ともに年2回以上が目安です。

Q3. 感染症と自然災害の訓練はまとめて1回でよいですか?

BCPは感染症と自然災害の両方について必要です。訓練に両方の想定を含めるか、それぞれ実施するのが望ましい形です。回数のカウント方法は自治体により解釈が異なる場合があるため、所管の指定権者にご確認ください。

Q4. 研修・訓練をしないと減算されますか?

減算の直接の要件は、感染症・自然災害のBCPが未策定、または計画に従った必要な措置を講じていないことです。研修・訓練・定期的な見直しは運営基準上の義務であり、未実施は運営指導での指摘対象となりますが、それ自体は業務継続計画未策定減算の算定要件ではありません。なお減算率はBCP未策定の場合、施設系・居住系が3%、その他のサービスが1%です。

7. おわりに:回数ありきではなく「動けるか」で設計する

研修・訓練の回数は、あくまで最低限のラインです。本来の目的は、災害や感染症が起きたときに利用者と職員の命を守り、サービスを途絶えさせないこと。「年に何回やったか」よりも「いざという時に現場が動けるか」を基準に設計することが大切です。

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主な出典・参考

  • 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」(BCP作成のためのガイドライン・ひな形)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(業務継続計画未策定減算の単位数・適用時期)
  • 各サービスの指定基準(運営基準)および解釈通知における研修・訓練の実施頻度に関する規定

※ 制度の最新の適用範囲・解釈は改定や自治体運用により変わる場合があります。実務判断の際は所管の指定権者・厚生労働省の最新告示等をあわせてご確認ください。

気象予報士
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元自衛官
西 倫弘(にし ともひろ)
気象予報士・元航空自衛官
航空自衛隊で培った危機管理の実務と、気象予報士としての災害リスク分析を掛け合わせ、介護施設のBCP策定支援と体験型防災研修を提供。「書類で終わらせない、本当に動ける防災」を全国の施設へ届けています。

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