介護BCPはいつまでに策定?経過措置の終了時期と減算適用のスケジュール整理

壁のカレンダーで過ぎた期限と残る期限を確認する介護施設の管理者。

「BCPって、いつまでに作ればいいんでしたっけ?」——この質問を今も受けます。結論から言うと、その期限はすでに過ぎています。

ややこしいのは、「経過措置」という言葉が2つの別の意味で使われていることです。ひとつは「策定義務」の経過措置、もうひとつは「減算の適用」の経過措置。前者はすべてのサービスで終わっていて、後者はほぼ終わっている——この2つを混同したまま「まだ猶予がある」と思い込んでいる施設が少なくありません。

この記事では、策定義務と減算適用のスケジュールをサービス種別ごとに整理し、今から策定する場合の最短ルートまでを、元自衛官・気象予報士の視点で解説します。

1. 【結論】策定の猶予はもう残っていない

まず結論からお伝えします。

  1. 策定義務:2024年4月から全サービスで完全適用。経過措置は2024年3月末で終了。
  2. 減算の適用:訪問系・福祉用具貸与等も含め、2025年4月から全面適用。
  3. 例外:居宅療養管理指導と特定福祉用具販売は減算の対象外(策定義務はある)。

つまり2026年9月の現在、「まだ作らなくてよい」介護サービスは存在しません。未策定の施設が確認すべきなのは「いつまでか」ではなく、「今どの状態にあり、次に何をするか」です。

2. 「策定義務の経過措置」と「減算適用の経過措置」は別物

この記事で最もお伝えしたいのが、この区別です。

経過措置の種類何の猶予かいつ終わったか
策定義務の経過措置「BCPを作らなくてよい」期間2024年3月末で全サービス終了
減算適用の経過措置「未策定でも減算されない」期間2025年3月末で全サービス終了(内容はサービスにより異なる)

2021年度の介護報酬改定でBCPの策定が義務化された際、3年間の経過措置が設けられました。これが「策定義務の経過措置」で、2024年3月末に全サービスで終了しています。2024年4月以降、BCPを策定していないこと自体が運営基準違反です。

一方、2024年度の介護報酬改定で新設された「業務継続計画未策定減算」には、別途の経過措置が設けられました。これが「減算適用の経過措置」です。「まだ猶予がある」という言い方が出てくるのは、こちらの話です。

混同が起きるパターン:「うちは訪問介護だから2025年3月まで猶予があった」というのは減算の話です。策定義務そのものは2024年4月からかかっていました。減算の猶予期間中も、未策定は運営基準違反でした。
策定義務と減算適用のスケジュール図。時間軸は2024年4月・2025年4月・2026年4月で、現在(2026年9月)に破線。策定義務(全サービス)は2024年4月から完全適用。減算は、施設・居住系(3%)と通所系など(1%)が2025年4月から全面適用(2024年度は指針等で回避可)、訪問系・福祉用具貸与・居宅介護支援(1%)も2025年4月から全面適用(2024年度は1年間の猶予)、居宅療養管理指導と特定福祉用具販売は減算の対象外(策定義務はある)。下部に「策定義務の経過措置と減算適用の経過措置は別物」の注記。

▲ 策定義務はすべて適用済み。減算も、対象外の2サービスを除き全面適用

3. 施設・居住系(減算3%):すでに全面適用中

特養・老健・認知症グループホーム・特定施設などの施設・居住系サービスは、減算率が所定単位数の3%です。

2024年4月〜2025年3月減算制度は開始。ただし「感染症の予防及びまん延の防止のための指針」と「非常災害対策計画」の両方を整備していれば減算を適用しない、という全サービス共通の経過措置あり
2025年4月〜全面適用。BCP未策定、または計画に従った必要な措置を講じていなければ減算

通所介護など通所系サービス(減算率1%)も、時期の扱いは施設・居住系と同じです。

減算の要件を正確に:減算の対象は「BCPが未策定」または「計画に従った必要な措置を講じていない」場合です。研修・訓練の未実施そのものは減算の算定要件ではありませんが、運営基準上の義務であるため、運営指導で指摘・是正の対象となります。減算と運営指導の切り分けは「運営指導でBCPはどこを見られる?」で解説しています。

4. 訪問系・福祉用具貸与・居宅介護支援(減算1%):2025年4月から全面適用

訪問介護・訪問看護などの訪問系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援には、2024年度に限り減算を適用しない1年間の猶予が設けられていました。

2024年4月〜2025年3月減算は適用されない(1年間の経過措置)。ただし策定義務はある
2025年4月〜全面適用。減算率は所定単位数の1%

この猶予は2025年3月末で終了しています。「訪問系は猶予がある」という情報が今も出回っていますが、すでに1年半前に終わった話です。現在は施設・居住系と同じく、未策定であれば減算の要件に該当します。

5. 居宅療養管理指導と特定福祉用具販売:例外の扱い

2つのサービスだけ、扱いが異なります。

サービス減算の扱い策定義務
居宅療養管理指導減算の対象外あり(2024年4月〜)
特定福祉用具販売減算の対象外あり(2024年4月〜)

この2サービスは、業務継続計画未策定減算の対象外とされています(厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」において、減算の対象が「全サービス(居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く)」とされているため)。ただし策定義務そのものはあるため、未策定であれば運営基準違反です。

ここでも重要なのは、減算の対象外であっても、策定義務は変わらないことです。減算されないだけで、未策定は運営基準違反です。

減算の適用・解除には体制等に関する届出が必要で、提出期限や取扱いは指定権者(都道府県・市町村)によって異なります。自施設のサービス種別での扱いは、所管の指定権者に確認してください。
専門家コメント|気象予報士・災害リスク分析の視点

BCPは策定して終わりではなく、災害想定を最新のハザード情報で見直すことが大切です。国土交通省の重ねるハザードマップは更新されるため、既に策定済みの施設も年1回は自施設の浸水想定・土砂災害警戒区域を再確認してください。「作ったのは2年前」という施設ほど、想定と現実がずれている可能性があります。

6. 今から策定する場合の最短ロードマップ

「期限はもう過ぎている」と分かったら、次は最短で「動ける最低ライン」を作ることです。完璧な計画を目指して数か月かける必要はありません。

手順やること
① ひな形を入手厚生労働省の「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」から自然災害編・感染症編のひな形をダウンロード。1から作らない
② 自施設のリスクを確認国土交通省「重ねるハザードマップ」で浸水想定区域・土砂災害警戒区域を確認。これが計画の前提になる
③ 空欄を埋める連絡網・役割分担・避難先・備蓄の置き場所など、自施設固有の情報を入れる。分からない欄は空欄のままで進める
④ 職員に周知(研修)読み合わせでよい。全員が同じ理解を持つ状態にする
⑤ 短い訓練で検証15分の机上訓練で十分。「連絡先が古い」「誰が判断するか決まっていない」が見つかれば、それが修正リスト
⑥ 記録を残す研修・訓練の実施記録を種別を分けて保管。運営指導で提示できる状態に

ひな形をベースにすれば、最低ラインは数週間で形にできます。そこから訓練で見つかった課題を反映していけば、計画は自然に育ちます。

ひな形の入手先と3層の集め方は「介護BCPの資料・様式はどこにある?」、ひな形をそのまま使うときの落とし穴は「厚労省ひな形だけで介護BCPは作れる?」、ハザードマップの使い方は「介護施設の災害リスクの調べ方」で解説しています。
専門家コメント|元航空自衛官・危機管理の視点

未策定の状態は、防災の観点でも経営の観点でも危険です。減算は結果のペナルティに過ぎず、本質は「災害時に利用者と職員を守れないこと」。今から策定するなら、完璧を目指すより、まず動ける最低ラインを早く作り、実際に訓練で運用しながら改善していくのが現実的です。

\ 無料・登録不要・約3分 /
あなたの施設のBCPは「動ける」?18問でスコア判定
策定・訓練・実効性・災害リスク・体制の5分野を100点満点で診断。改善点がその場で分かります。 ▶ 診断をはじめる

7. よくある質問(FAQ)

Q1. 介護BCPは、いつまでに策定しなければいけませんか?

結論から言うと、期限はすでに過ぎています。BCPの策定義務は2024年4月からすべての介護サービスで完全に適用されており、策定義務に関する経過措置は2024年3月末で終了しました。「まだ猶予がある」という話は減算の適用に関するもので、策定そのものの猶予はどのサービスにも残っていません。未策定であれば、今すぐ着手する必要があります。

Q2. 減算の経過措置は、まだ残っていますか?

結論から言うと、減算の経過措置はすべて終了しています。訪問系サービス・福祉用具貸与・居宅介護支援を含め、2025年3月末で経過措置が終了し、現在は全面適用されています。なお居宅療養管理指導と特定福祉用具販売は、そもそも業務継続計画未策定減算の対象外とされていますが、BCPの策定義務そのものはあるため、未策定であれば運営基準違反です。

Q3. 今から策定すれば、減算は避けられますか?

結論から言うと、策定し、必要な措置を講じた状態になれば、以降は減算の要件に該当しません。業務継続計画未策定減算の要件は、BCPが未策定であること、または計画に従った必要な措置を講じていないことだからです。なお減算は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月から、その状態が解消された月まで適用されます(国の通知で定められています)。つまりBCPを策定し必要な措置を講じた月までは減算の対象で、その翌月から外れる形です。ただし体制等に関する届出が必要で、提出期限や取扱いは指定権者(都道府県・市町村)によって異なるため、策定後は所管の指定権者に手続きを確認してください。

Q4. 気づかずに未策定のまま運営指導を受けたら、減算は指摘された月からですか?

結論から言うと、指摘された月からではありません。減算の起算点は、運営指導などで発見された時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点です。「気づいた時点から直せばよい」ではなく、経過措置が終了した時点からの状態が問われるため、未策定に気づいたら速やかな着手が必要です。具体的な取扱いは所管の指定権者にご確認ください。

8. おわりに:期限を数える段階は終わっている

「いつまでに」を調べている時点で、答えは「もう過ぎている」です。策定義務の猶予はどのサービスにも残っておらず、減算も対象外の2サービスを除き全面適用——これが2026年9月の現在地です。

ただ、それで慌てる必要はありません。ひな形をベースに最低ラインを数週間で作り、訓練で育てる——この順番なら、遅れは取り戻せます。大切なのは、今日から動き始めることです。

「何から手をつければいいか分からない」「策定と訓練をまとめて相談したい」——そのようなお悩みがございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。気象予報士としての「正確な災害リスク分析」と、元自衛官としての「本当に動ける危機管理ノウハウ」で、御社の計画づくりを支援します。拠点の鹿児島からオンラインで全国対応しています。

主な出典・参考

  • 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第239回)資料1「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(減算の対象:全サービス〈居宅療養管理指導、特定福祉用具販売を除く〉・単位数・経過措置)
  • 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A」(減算の算定要件・経過措置の取扱い)
  • 厚生労働省 老企第36号「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」第二の2(11)(減算の適用期間)
  • 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続ガイドライン等」(BCPひな形)
  • 各都道府県・市町村「業務継続計画未策定減算の経過措置終了に伴う届出について」等の通知
  • 国土交通省「重ねるハザードマップ」

※ 減算の適用時期・届出の要否は指定権者(都道府県・市町村)の運用により異なる場合があります。実務判断の際は所管の指定権者・厚生労働省の最新の告示等をご確認ください。本記事の内容は2026年9月時点の情報です。

気象予報士
×
元自衛官
西 倫弘(にし ともひろ)
気象予報士・元航空自衛官
航空自衛隊で培った危機管理の実務と、気象予報士としての災害リスク分析を掛け合わせ、介護施設のBCP策定支援と体験型防災研修を提供。「書類で終わらせない、本当に動ける防災」を全国の施設へ届けています。

「まだ作っていない」を、今週で終わらせませんか?

「何から始めればいいか相談したい」「策定と訓練をまとめて整えたい」——そんな内容で大丈夫です。
元自衛官・気象予報士が無料でご相談に乗ります。鹿児島からオンラインで全国対応。

無料相談を申し込む